人生の楽しい終わらせ方
ベッドから降りて、ようやく昨晩の事態が少し把握できた。
床に落ちているずたずたの布切れは、猫のマスコットだったものだ。
中に詰まっていたビーズは溢れて散らばっている。
左右の目は真ん中で切り裂かれて、あっちとこっちに分かれてしまっていた。
キーホルダーの金具に、切れ端と片方の耳だけが残っている。
もう片方は見当たらなかった。
その残骸にも、周囲にも、赤いものが染み込んでこびりついて混ざりあって、すでに乾いていた。
バラバラになっているのは布とビーズでできたただのぬいぐるみだが、まるで本当に大量出血しているみたいで、なかなか凄惨な光景だ。
しゃがみこんで、触らずに眺める。
いつもできるだけ部屋を汚さないよう気をつけているのに、ごくたまにこうして、傷の大きさも血が付くのも構わずに衝動に任せてしてしまうことがあった。
前回の“コレ”から確か、一年も経っていないような。
結構出したな、と、冷静に考える。
血の匂いでまたすこしふらついた。
タオルを巻き付けただけで、ろくな止血もしていなかったらしい。
左腕を持ち上げると、傷の周りで血が固まっていた。
あとできちんと消毒しなければいけないだろう。
傷が開いてしまうかしれないことを考えると、少し気が滅入る。
フローリングの板目に、血とビーズが詰まっていた。
掃除が面倒だ。
溜め息をついて、掃除機を取りに立ち上がった。