人生の楽しい終わらせ方

そして二人は、ここへ来たのだ。
ビビッドカラーのナイロンパーカーにリュックサックを背負って、途中で夕飯用のサンドイッチを買い込んで。
がさがさと鳴るコンビニの袋には、スナック菓子とカットフルーツ。
中途半端なレジャースタイルといい、ピクニックに来た若いカップルとしては、不審さもなく溶け込んでいる。

二人でバンガローを一部屋借りた。
寝具や調理器具のレンタルサービスもあるキャンプ場だから、荷物が少なくても問題はない。
悪目立ちを避けようと、あえて三連休中の土曜日に計画した。
思った通り、雪が降る前の最後の行楽とばかりに、複数の家族連れがバーベキューをしたりしている。
カナタとサエキは、さりげなくそちらには近づかないように、写真を撮ったり景色を眺めたりするふりをして過ごしていた。

そばに川があるのは確かめてあるが、河原まで降りて行けること、サエキの気に入る景色であることなど、確認したいことはいくつもある。
ある程度人の入る場所でなくては、すぐに見つかってしまって死にきれないかもしれない。
かといって人里離れすぎていては、発見が遅れる危険がある。
せっかくの遺体が汚らしく動物に食い荒らされてしまっては最悪だ。
その点では、キャンプ場の近くならば条件に適っていた。

体感では気温の低さも十分、レジャースポットなだけあってロケーションもなかなかだ。
じきに紅葉が始まるだろうし、雪のちらつく初冬を待ってもいい。
美しい景色の中、氷のように冷たくなっている、少女の死体。
これ以上ないほど幻想的な光景だろう。
唯一それを目にすることのできないサエキを気の毒に思うほど、カナタにとっては魅力的だった。

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