人生の楽しい終わらせ方
少し先のほうに、頭上の開けた場所があって、水が流れているのが見える。
いつのまにか、叫ぶように話さなければお互いの声も聞こえないほど水音が大きくなっていたことに、はじめて気が付いた。
川幅は広くない。
だが狭くもない。
大人が五人腕を広げて並んだら、向こう岸に届くだろうか。
流れは、水音から想像していたほど速くも激しくもない。
川原の様子は、二人が立っているところからでは、枯れかけた藪に隠れて見えなかった。
サエキがカナタのパーカーの裾を引いて、「行こうよ」と言った。
返事を返すが、サエキに動く様子はない。
不思議に思って彼女の方を見ると、足元をじっと見つめている。
カナタはその視線を追って、躊躇っていた理由を理解した。
屈み込んで、足元に手を突く。
スニーカーを履いた脚が、地面を蹴った。
「、っと」
土や砂というよりも小石がごろごろと混ざっているような地面で、あまり足に優しくない。
だがカナタは危なげなく着地して、立ち上がった。
サエキの立っている岩は、カナタの肩よりも高い位置にある。
ぺたんこのスニーカーを履いている今日の彼女が並べば、きっと目線の高さとほとんど変わらないだろう。
サエキを見上げて、カナタは手を伸ばした。
「ほら」