人生の楽しい終わらせ方
「結構血出てるね……そこまで歩ける?」
「川? 私、絆創膏持ってるよ」
「うん、でも一回洗ったほうがいいよ」
「川の水で大丈夫かな」
「えっと、大丈夫」
サエキに手を貸して、川原を水辺のほうまで歩いた。
少し大きめの石に座らせて、スニーカーと靴下を脱いでもらう。
ふくらはぎを伝った血は、足首まで流れていた。
カナタはリュックサックを下ろして、ミネラルウォーターのペットボトルを取り出した。
さすがに、なにが混じっているかわからない川の水で傷口を洗うわけにはいかない。
自分のメッセンジャーバッグからポーチを取り出して中を探るサエキに、一応とばかりに声をかける。
「ちょっと滲みるかも」
「え、うわ、ちょ、いった」
ほとんど事後の警告に、サエキは肩を大きく跳ねさせた。
砂で汚れた膝にかけた水は、血と同じようにふくらはぎを伝い、足首で二股に分かれて、地面へ吸い込まれていく。
サエキが右足を乗せた石の下を、流れる水が通っていた。
ひんやりした空気が、砂地の奥から立ち昇ってくるみたいだ。