人生の楽しい終わらせ方
廃ホテルで悪戯半分で鋭い破片を手にした時や、擦り剥いた膝の傷をわざと抉った時の、悲鳴のような声、なんてものではない。
耳に残る痛いほどの余韻に顔をしかめる。
サエキは身を守るように体を縮こめて、肩を震わせていた。
カナタは、咄嗟に取った距離を、恐る恐る縮める。
名前を呼ぶと、サエキはびくりと体を跳ねさせた。
さっきまでとは違う、明らかに、怯えている。
「……ごめん」
なんと言っていいかわからずに、とりあえずそう口にした。
言ってしまってから、そんな雑な謝罪だけで許されるような所業ではないのでは、という考えが、頭を過る。
雨の雫が、氷のように冷たく鋭くなって、全身に突き刺さったような気がした。
少しアブノーマルな関係だからといって、女の子に対して、絶対にしてはいけないことをしてしまったのではないか。
カナタは、俯くサエキの肩に、恐々手をかけた。
「サエキさ、」掠れた声が、金切り声で遮られる。
カナタの手を思いきり払い除けたサエキは、ただでさえ小さい体をさらに丸めて、なにか呟いた。
雨音にかき消されそうなほど小さな囁き声に、カナタは顔をしかめる。
そして、改めて、名前を呼んだ。