先天性マイノリティ
──俺はコウを好きなんだ、好きだったんだ。
愛して「いた」んだ。
過去形を許容した途端に、泣けなかった一月分の涙が止めどなく溢れる。
…そうだ、俺は、コウが愛しくて堪らない。
自己愛と、背徳と劣情と神格化と欲望と欠落と、諸々の合わせ鏡だとしても、決して嘘ではない。
──愛していた。愛していた、愛していたんだ。
「ゼロジの格好いいとこも悪いとこも、知ってるのは私とコウだけだからね。忘れんなよ」
稚児を宥めるように背中を撫でるメイの手に後押しされるように、嗚咽を洩らして泣いた。
墓参りに来たらしい老人が立ち止まり、少し離れた場所から心配そうな顔をしてこちらを見ている。
その顔が死んだ婆ちゃんと被って見えて、俺は声をあげて泣き続けた。
空は、青かった。