先天性マイノリティ
「…普通さあ、男二人女一人の友情だったら、男二人で女一人を取り合うのが相場じゃないの。なんであんたたちがくっつくわけ」
「面白いだろ。まさかの展開」
「まあね、薄々わかってたけど。ゼロジを不幸にしたら許さないから」
「わかってる。約束するよ」
──数年前、コウの卒業の日の放課後、夕焼けの海が広がる教室で約束をした。
まるで昨日のことのように詳細に蘇る会話。
あいつは、見事に裏切りやがった。
コウは死に似合っているようで似合わない。
突拍子のない変わり者で、憎らしいくらいに優しくて、悟りを開いた爺さんのように穏やかなやつだった。
冷たい棺も、天国も地獄も似合わない。
一度も口にしたことはないけれど、私がゼロジを好きだということは、きっとコウには見抜かれていた。
同様に私も、コウがどれほどゼロジを好きかを知っていた。
言葉にしなくとも、わかってしまう。
…私たちは精神的双子だったから。
コウが自殺をした理由も、本当はなんとなくわかっている。
死は人類にとって最も未知で神秘的なもので、命と引き換えに永遠性を手に入れることが出来る。
絶対的で、不変。
根が真面目なゼロジは、これからずっとコウのことだけを考え続けるだろう。
自分が死ぬまでずっと負い目を感じ、思い出を反復しながら生きていくだろう。
至極退廃的で甘美な魅力に憑かれてしまえば、抗うことは難しい。
死よりも愛が勝った結果がコウの死だ。
同時に、園児が好きな子を虐めるときのような幼稚なサディズムが顔を覗かせた究極の束縛。
ゼロジは俺のものだ、と誇示するような死。
淡白なふりをして誰よりも嫉妬深く、烈火のような激しい感情。
それでいてとんでもなく優しいのだから、コウはおかしい。
真性のクレイジーだ。