先天性マイノリティ




コウとはじめて顔を合わせたときのことは、今でも鮮烈に覚えている。



「独りでいるの好き?」



屋上で空を仰ぎ見ていると、背後から声をかけられた。

放課後のこんな時間に、私以外に人がいるとは思わなかったから驚いた。

振り向くと、知らない顔。

他人に対して疎い私には同級生なのかどうなのかもわからない。

学ランに映える黒髪、独特なふわふわとした雰囲気。一目見たら中々離れないダーク・ブラックが眼に焼きついた。



「別に好きでも嫌いでもない、わかんない」


「そう。俺もわかんない」



…変なやつだと思った。


男はアスファルトにぺたりと尻餅をつくように座り胡座をかく。浮世離れした空気は何処か親近感を感じさせるものだった。

同質だ、と思った。

生まれてはじめての感覚だった。

私は主語のない会話が好きだ。

だから心地好いと思った。



「変わってそう」


「誰?」


「…アナタです」


「なんか俺たち、気が合いそうだよな。あ、ナンパじゃねえよ。俺、屋上好きなんだよね、帰宅部だしやることないし」



やっぱり変だ。

何処が、とは言えないけれど、人当たりの良さそうな笑顔と、良い意味で質量の軽い言葉に不思議な違和感がある。

喩えるならば、真夏の海岸に分厚い防寒着を着て立っているようなあべこべな感じだ。


…友達が多そうに見えて警戒心が強いタイプかもしれない。

幼い頃に培われた観察眼で、私はそう判断をした。探りを入れてみる。



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