先天性マイノリティ
どんなに辛くても朝は来る。強制的な日常は鞭を持ったサディズムの塊だ。
弱者はどうぞお好きに死んでください、という社会構造。
満身創痍の世の中には夢も希望も持てない。
なにをしても、なにがあっても無くても、毎日がただ、なぞられたカーボン紙のように味気無く過ぎていく。
現在、私は百貨店のアパレルショップで働いている。
社員志望で入ったものの、抗争が激しい職場にうんざりする毎日。
同僚の女のひとり、ホシノマイコが言う。
「キサラギさんって自分に自信がありそうなタイプだよねー。ストレスとかなさそうで羨ましーい」
…遠廻しに私が鈍感だと嫌味を言っているのだろう。
彼女は自分がいかに美人でスタイルが良いかということを振り撒く女王蜂の典型のような女だ。
社内の噂によると課長の愛人だという。
常に新作のブランド物のポーチやバッグを持ち、派手な格好で出勤。
アパレル業に就きながら流行りものに疎い私は正直、羨ましくもなんともない。
極端にいえば、高級ブランドショップも百円ショップも、私の中での価値は全く同等なのだ。
体裁や値段ではなく、自分がいいと思ったものが、いい。
モノもヒトも同じ。
それが私の固執しているポリシーだ。
妥協は、しない。
職場でのキサラギメイはひたすらに平均を演じる女だ。
じっと耐え、拘束時間が過ぎるのを待つ。
義母から虐げられたお陰で我慢をすることと耐性だけは人一倍会得した。
だから、仮面を被って一般的な女子のふりをする。
…本当の私は、今も星の王子さまの世界で暮らしたいと願う、泣き盛りのお子さまなのだけれど。