先天性マイノリティ



ゼロジから連絡が途絶えて一ヶ月が経とうとしていた。

メールをしても返って来ず、殆ど着信をすることもなく謝罪のアナウンスを耳にする。

後追い自殺の心配が無かった訳ではないが、それよりも別の問題で私は躊躇った。

──コウがいなくなった今、私とゼロジの間に友情は成り立つのだろうか?


私たちは三人でひとつだった。

一番大切なコウというパズルのピースが抜け落ちてしまった今、どうしたらいいのかわからない。

木から落ちた腐りかけの石榴の実のように、心臓がじくじくと痛む。


気を紛らわすためにコウの墓に行ってみると、ゼロジがいた。

また少し痩せたようだ。


…無事で良かった。

生きていて良かった。

それが私の全て。


彼らしい謝罪を訊いて胸が苦しくなる。

謝って欲しい訳じゃない。

寧ろ私はとても感謝している。

…ゼロジは自分に対して自信がないってよく言うけど、そうじゃない。

ゼロジは自分で思ってるよりずっと、凄い人だよ。


──ゼロジが好きだ。

恋愛関係になりたい訳じゃない。

コウを愛する彼が好き。

周りに気を遣い過ぎていつも損をしているところも、コウや私よりも強いのに気づいていないところも。ただ、好き。



これから先、彼に大切な女性が見つかって結婚したとしても、再び同性の恋人が出来るとしても、コウを忘れられず生涯独身でいようとも見守っていきたい。

私は、親友だから。

この想いを墓場まで連れていくという気持ちは変わってはいない。

私はゼロジではない誰かと結婚をして年を重ねるだろう。


または独身でもいい。





…好きだから、求めない。


今のままでいたい。


私はコウを絶対に裏切らない。


ゼロジのことも裏切りたくない。




──強くそう思うと同時に内に秘めた真っ黒な感情が芽吹き、喋り出す。




< 38 / 95 >

この作品をシェア

pagetop