先天性マイノリティ
ゼロジから連絡が途絶えて一ヶ月が経とうとしていた。
メールをしても返って来ず、殆ど着信をすることもなく謝罪のアナウンスを耳にする。
後追い自殺の心配が無かった訳ではないが、それよりも別の問題で私は躊躇った。
──コウがいなくなった今、私とゼロジの間に友情は成り立つのだろうか?
私たちは三人でひとつだった。
一番大切なコウというパズルのピースが抜け落ちてしまった今、どうしたらいいのかわからない。
木から落ちた腐りかけの石榴の実のように、心臓がじくじくと痛む。
気を紛らわすためにコウの墓に行ってみると、ゼロジがいた。
また少し痩せたようだ。
…無事で良かった。
生きていて良かった。
それが私の全て。
彼らしい謝罪を訊いて胸が苦しくなる。
謝って欲しい訳じゃない。
寧ろ私はとても感謝している。
…ゼロジは自分に対して自信がないってよく言うけど、そうじゃない。
ゼロジは自分で思ってるよりずっと、凄い人だよ。
──ゼロジが好きだ。
恋愛関係になりたい訳じゃない。
コウを愛する彼が好き。
周りに気を遣い過ぎていつも損をしているところも、コウや私よりも強いのに気づいていないところも。ただ、好き。
これから先、彼に大切な女性が見つかって結婚したとしても、再び同性の恋人が出来るとしても、コウを忘れられず生涯独身でいようとも見守っていきたい。
私は、親友だから。
この想いを墓場まで連れていくという気持ちは変わってはいない。
私はゼロジではない誰かと結婚をして年を重ねるだろう。
または独身でもいい。
…好きだから、求めない。
今のままでいたい。
私はコウを絶対に裏切らない。
ゼロジのことも裏切りたくない。
──強くそう思うと同時に内に秘めた真っ黒な感情が芽吹き、喋り出す。