先天性マイノリティ
「コウは、キサラギメイを好きだった。知ってたか?」
「え?」
…、メイ?
想定外の内容に理解が追いつかない。コウが、メイを、なんだって?
「コウは、キサラギがお前を好きだから諦めようとして、気持ちを捻じ曲げて男のお前と付き合った。お前は最後までなにも気づかない。お気楽野郎だな」
周囲の喧騒が砂嵐のように目の前を駆け抜けていく。
…コウが、メイを?
嘘だ。
嘘だ嘘だ嘘だ。
否定する自分がパニックを起こし、なにも考えられない。
びしゃびしゃっ、と肉片の雨が滴り降るような幻覚。
ナツメの背後には口元を歪めた死神が寄り添い、手招きをする。
俺は紙粘土で造られた像のように表情を失くし、呆然と立ち尽くす。
──コウが、メイを。
ナツメの虚言だ、と思う一方、心臓の厭な動悸が止まらない。