先天性マイノリティ
「俺たちって、本当にマイノリティだよね」
「うん。でもそうじゃなかったら私、シュウちゃんに会えなかったと思うから」
狭い部屋の中、握り合った手。
くしゃりと笑った彼の横顔が夕暮れ色に染まる。
深い繋がりを実感する幸福というものは、こんなに素朴に美しいのか、と思う。
仔猫が毛糸玉にじゃれて遊ぶように唇を重ね合わせて、柔らかく抱き締め合う。
…もう、寒くない。
心臓の鼓動が、うれしい、と泪を溢す。
恋という名称の意味を、私は今まで知らなかったのかもしれない、と初めて想った。
「結婚するときは、サクラくんと三人でしようか」
「それって、プロポーズ?」
「うん、そう」
「ゼロジを入れるなら、コウも一緒じゃないと。あいつ、嫉妬深いから」
「ああ、ウエダさんの場合、本当に生き返りそうで怖いね」
部屋の本棚から顔を覗かせた「星の王子さま」を見つめる。
ぎらぎらしたピンクでもなく、華やかな虹色でもない、ほんの僅かに色づいたアイヴォリーの日々。
──ゆっくりと過去の扉を閉めて、
未来へ行こう。