大好きな君


と、言えませんっ

席に帰って来たけど隣の七瀬碧が怖くって怖くってもう
授業なんてイヤ。


「あのー・・・」

「ーっっはいっ」

怖くって!なんで話しかけるの?
怖いって言ったじゃないか


「実波さんだよね、教科書見せて?」


あ、そっか教科書か
そうだよね無いもんね


「次、数学だからこの教科書だよ
前の学校と違う?」

「じゃなかったら言わないよ」


含みのある顔に含みのある声がやっぱりイヤ
なんて口が裂けても言えないし言う気もないけど、ありがとうでしょ

も、言う気ないけど



「さっきのさ、あんたが・・・実波さんが泣いたのって俺のせいだったりするの?」


は?

え?いきなりどうしたの?罪悪感とか?
「じゃなかったら言わないよ」とか言うやつが?


不可解だわ


「聞いてる?」

「うわっ」

覗き込まれてビックリすると一緒にまたやっちゃったかって思った


「・・・違う、違いますよ」

「嘘つくの?」

「――っ」

なんなの?この人

「そうだって言ったって何か変わるんですかね?」

へらへら笑いながらふざけてるみたいに言うけど
怒ってるからね? 


「変えるから」

「・・・・・・え?」


想像してなかった答えに驚いてる私を置いて七瀬碧は話続けてる


そうじゃない

そうじゃないよ

全然違う

君のことが、

あの発言が嫌だったんじゃないよ


ぐるぐる回る頭の中が渦になって
またあの虚無感と刺さる声でぐちゃぐちゃになるのに
その言葉だけは聴こえた



「怖がらせてごめん」



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