金魚すくい
「雄馬っ」
息を切らせながら雄馬を追いかける。
声を聞いた瞬間歩調が若干弱まり、私は隣に滑り込んだ。
「雄馬……」
「なんだよ」
「本当は優のことそんなに怒ってないんでしょ?」
ずっと正面を向いていた雄馬が私の方へ顔を向けた。
「あいつの話はするな」
また不機嫌オーラを放つ。
こういう時の雄馬は、素直じゃない。
「優だって好きで私達から離れていった訳じゃないんだから」
「だから……」
「優は私達に会いたくてわざわざこの学校に編入してきたって言ってたよ」
すると突然、雄馬は私に向き直り少し屈んで、顔をぐっと傍に寄せた。
それは拳ひとつ分の距離。
私が思わず身を引こうとしたその時、言葉が鼻先をかすめたーー。