金魚すくい


「そういえば柚子、今日あいつと会った時あんま驚いてなかったよな」



優の話をするなって言ったのは雄馬の方だと思うんだけど……?


早速その約束を自ら破る雄馬。


なんだかんだ言いつつ、やっぱり気になるんじゃない。


そう思いながら私は視線を泳がした。


だって雄馬の目が針のように私を突き刺していたから。


チクチク チクチク。



「……知ってたのか、優が帰ってきてた事」



その質問にはさすがに後ろめたいと思う自分がいる。


事実、私は春休み中に偶然とはいえ優と遭遇していたから。


責めるような瞳に圧倒され、私は口をもごもごさせながら言葉を吐き出した。



「ーー知ってた訳じゃないよ。ただ、春休みに一度偶然街で出くわしただけで……。

この街に帰ってきてたのかどうかまでは知らなかったから……」



< 113 / 262 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop