金魚すくい
「そういえば柚子、今日あいつと会った時あんま驚いてなかったよな」
優の話をするなって言ったのは雄馬の方だと思うんだけど……?
早速その約束を自ら破る雄馬。
なんだかんだ言いつつ、やっぱり気になるんじゃない。
そう思いながら私は視線を泳がした。
だって雄馬の目が針のように私を突き刺していたから。
チクチク チクチク。
「……知ってたのか、優が帰ってきてた事」
その質問にはさすがに後ろめたいと思う自分がいる。
事実、私は春休み中に偶然とはいえ優と遭遇していたから。
責めるような瞳に圧倒され、私は口をもごもごさせながら言葉を吐き出した。
「ーー知ってた訳じゃないよ。ただ、春休みに一度偶然街で出くわしただけで……。
この街に帰ってきてたのかどうかまでは知らなかったから……」