金魚すくい
だけどそんな理由でこの雄馬が納得するわけがなく……。
「じゃあなんでその時言わなかったんだ」
雄馬の視線から逃れようと俯く。
だって、あの時は優と会ったのもほんと実感がなくって。
毎日夢だったんじゃないかと思ってた。
それに……雄馬とは学校以外で話したことなんてずっとなかったから。
メールも電話もしたこと無いし。
優に電話するのと同じで、雄馬にも連絡するのにすごく勇気がいったんだよ……。
ちらりと視線を上げると、眉間にシワを寄せたままの雄馬が私の返事を待っていた。
このまま流せそうにはない、か。
「ごめん……」
それだけを絞り出すのが精一杯だった。
それ以上は何て言えばいいのかわからなかったから。
「……なんだよそれ」
雄馬は顔を背けて先に歩き出す。
私は静かにその後を追った。