金魚すくい


「誰に向かってそんな口を聞いているんだ!」



ーーガンッ。



再び頭部に痛みが走る。


……ああ、さっきまで幸せだったのになぁ。


優と雄馬……ふたりとまた同じ学校で同じ教室で授業受けれると思ってわくわくしてたのに。


やっぱり昔とは違ってしまったんだ。


同じなようで同じじゃない。


優は妙に大人びてるし、雄馬は優を許さないとか思ってるし、私は……こんなだし。



「きゃぁっ!」



突然手のひらに強い熱を感じた。


何か熱いものを無理矢理左手に握り締めさせられた。


熱い!


なに、なんなの……!?


震えながら手を広げると、そこには。



ーー煙草……。



手の中で煙草の火は白い糸のように揺らめきながら消えていた。



< 116 / 262 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop