金魚すくい
「もしかして、お金使い切っちゃった……?」
雄馬はニヤリと笑った。
その笑みは完全に私の言葉に対する肯定だった。
「オイ優! ちょっと金貸してくれよ」
私は逆サイドにいる優に今度は視線を移した。
しかし、優も同じくポケットの裏地をひっくり返してるところだった。
「……俺もない……」
「なんだ、お前らもう使い切ったのか!」
しょーがねぇなー……と言いたそうな表情でおっちゃんは頭を掻く。
「ほら、一回だけだぞ?」
そう言って2人の前に差し出された網。
なんとも分かりやすく2人の表情には笑顔が宿った。
「嬢ちゃんはやらないのか?」
そう言っておっちゃんは私にも網をくれたけど、
「うん、私はいいの。2人がやるの見てる」
「そうかい」
おっちゃんは網を元に戻した。