金魚すくい
「はぁ!? なんで一匹なんだ!」
「そうですよ! 俺達それぞれ一匹ずつ取ったじゃないですか!」
「ガキ共、タダでやらしてもらって文句言ってんなよ。2匹すくって1匹もらえりゃ十分じゃねーか。
ほらほら、もう他の客の邪魔だ。それ持ってお前らあっち行け!」
手を払いながら親子連れに商売を始めたおっちゃん。
2人はまだ不満な様子だが、私はおっちゃんの横顔にお辞儀して2人を連れて立ち去った。
「なんだよあのおっさん! ケチだなっ!」
雄馬はまだ不服を漏らした。
しかし私は満足だ。
狭い袋の中で優雅に泳ぐ金魚。
それを微笑みながら見つめていると
「柚子」
優が私の顔を覗いていた。