金魚すくい
「お疲れさまでした」
店頭に立つ店長や深夜帯もこのまま働くスタッフに挨拶し、私はスタッフルームへと戻った。
「お疲れー」
「あっ、お疲れ様です」
スタッフルームで煙草を吹かしながらスマホの画面を見ている人物。
その人物が部屋に入った私に向かって笑顔で挨拶してくれた。
「勉さん、この後出勤なんですか?」
見ていたスマホをテーブルに置き、足を組み直しながら勉さんは言った。
「そうなんだ。その前に一服って思って」
そう言って吸った煙草の先が赤く光る。
ジジッと焼ける音が聞こえてきそうなほど、美味しそうにそれを吸う勉さん。
……ああ、やっぱり違う。
お義父さんが吸う煙草とは、全く違う。
匂いを嗅ぐだけで嫌悪感が出ていた煙草の煙が、今は安心できるものだった。
それはきっと勉さんの持つ雰囲気がそうさせるんだろうなーー。