金魚すくい


「うん、鈍い」



ばっさり。


端正な目鼻立ちが愉快そうに崩れる。



ーーそう、なんだ。



煙草を灰皿に置いて、勉さんは立ち上がり項垂れた私の肩に手をのせた。



「ごめんごめん、でも俺もショックだったんだよ。これでも本気で言ったつもりだから」



勉さんが近づくと、煙草の、セブンスターの香りが強くなる。


嫌悪しない香り。


煙草の香りだと思っているこれは、もしかすると勉さんの香りなのだろうか。


そう思わせるほど、安心感がある。



「だいたい、好きじゃなかったらこんなに何度も2人で食事に誘ったりしないでしょ。接点も大してないのに」



……確かにそれはそうだけど。


でも好かれる要素も分からなかったから。


大した接点がない分余計に……。


< 185 / 262 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop