金魚すくい
「うん、鈍い」
ばっさり。
端正な目鼻立ちが愉快そうに崩れる。
ーーそう、なんだ。
煙草を灰皿に置いて、勉さんは立ち上がり項垂れた私の肩に手をのせた。
「ごめんごめん、でも俺もショックだったんだよ。これでも本気で言ったつもりだから」
勉さんが近づくと、煙草の、セブンスターの香りが強くなる。
嫌悪しない香り。
煙草の香りだと思っているこれは、もしかすると勉さんの香りなのだろうか。
そう思わせるほど、安心感がある。
「だいたい、好きじゃなかったらこんなに何度も2人で食事に誘ったりしないでしょ。接点も大してないのに」
……確かにそれはそうだけど。
でも好かれる要素も分からなかったから。
大した接点がない分余計に……。