金魚すくい
「柚子?」
遠慮がちに扉をノックし、扉一枚隔てた先にいるママ。
「なっ、なに?」
声でママだと分かっていても、一瞬飛び跳ねた心臓を抑えることが出来なかった。
扉には新しく付けた南京錠が付いてある。
家族とはいえ思春期の娘の部屋だ、プライバシーを尊重するママは鍵を閉めていてもなんら不思議には思わない。
それにお義父さんと違って、無理にこじ開けようとも、ましてやそれを壊そうともしない。
だからママは扉の向こうからノックし、声をかける。
「ごめん、寝てた?」
「ううん」
そう返事を返しながら、扉の向こうの様子を伺うため、耳をすませた。
大丈夫……あの人はいない。
それを確認してから、私は鍵を外し、扉を開けた。