金魚すくい


ふぅっ、というため息を肩でつき、ママは私の肩に手を置いた。



「しょうがないわね。昔から変なとこ頑固なんだから、柚子は」



そう言って、微笑んで。



「心配してくれてありがとう」



私は笑った。


だけど、それは一瞬で消え失せる事になる。



「だけど、柚子。明日だけはバイト休んで欲しいの」


「えっ、なんで?」


「田舎のおばあちゃんがぎっくり腰になっちゃったみたいなのよ。だから明日行って2日間だけ身の回りの面倒を見てくるから、柚子には家の事をお願いしたいの」



それは死の宣告にも聞こえて、



「そんなの嫌よ!」



私は思わず叫んだ。


気づいたら叫んでいた。


目の前が血の気を失った時のように、サッと色を失って、その中で私は叫んだんだーー。


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