金魚すくい


そんなの嫌だ。


そんなの無理だ。


私は殺されてしまうーー。



「どうしたのよ……? そんなこと言ったって、パパは家の事なんにもできないんだもの」


「だけど……」



私が余りに怯えていたものだから、さすがにママが怪訝そうな顔で私の顔を覗き込む。


ーーだめだ、気づかせちゃいけない。


ママに知られてはいけない。


私は慌てて笑顔を張り付けた。



「ほらっ、私なんてなんの役にも立たないし……そっ、それなら私がおばあちゃんのところへ世話しに行くわ」


「なーに言ってんの。役に立たないわけないじゃない、昔はよく家の手伝いしてくれてたでしょ?

それに、柚子がおばあちゃんの世話しに行くなんて……学校あるじゃないの」



ママは笑って私の額を優しく指で弾く。



「そんなの休むわ」


「ダメ。なに言ってるの!」



私の言葉に目尻を怒らせて、言葉を続けた。



「柚子何がそんなに気に食わないの。さっきから言ってる事がめちゃくちゃよ?」


「だって……ママが2日もいないなんて……」



どんな恐ろしい目に遇うか……想像するだけで涙が出そうになった。


だけど、ここで泣く訳にはいかない。


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