金魚すくい



「行ってきます」



私はぼそりとそう呟き、玄関へ向かった。



「行ってらっしゃい。柚子、今日と明日の2日間は真っすぐ家に帰ってくるのよ」


「……うん」



背を向けたままもう一度行ってきますと言葉を放ち、私は玄関の扉を開けた。


このまま逃げ出してしまいたい。


このまま知らない土地で、あの人の手の届かないところまで行ってしまいたい。


途中、私の足は止まる。


家を出て少し経った頃、学校まではまだ距離がある。


なのに足が止まる。


この2日間の事を考えると怖くて、とても人の多い学校に行く気になれない。



ーーお腹、痛い。



不意に溝落ち辺りが締め付けられたように悲鳴を上げる。


無性に泣きたくなって、その場にしゃがみ込んだ。



誰かーー。





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