金魚すくい
「えっ、大丈夫? 病院行った方がいいんじゃないか」
「ううん、大丈夫。多分少ししたら治まる気がするし……」
「でも……せめてどこか座れそうなところに移動しよう」
心配そうに眉をハの字にした優は、周りをキョロキョロ見渡しながら、その場所を探す。
お願い、優。
私の事は放っといて。
今は1人にして……。
「もう、ほんと大丈夫だから。優は先に学校行ってて」
「いいよ、俺も一緒にいるよ。ほら、立て……」
そう言った優は私の腕を肩にかけ、ゆっくり立ち上がらせようとした。
だけど。
「ほんとにいいから。1人にしてっ!」
私は優の体を突き放した。
ーーあっ、しまった。
そう思った時には遅かった。
優しい腕は払われ、優しい瞳は……悲しみの色に染まっていた。