金魚すくい
チュンチュン……。
微かな意識の中、小鳥のさえずりをどこか遠くで聞いていた。
薄らいでゆく幼少時代。
小学生だった優や雄馬の輪郭がどんどんボヤけてゆき、白く薄らいだ意識が脳内を埋め尽くす……。
ーーああ、
あの時もらった金魚はどうしたんだっけ……?
そんな言葉と共に、私は瞼を持ち上げた。
チュンチュンチュン……。
カーテンの隙間から差し込む光りが私の瞳を射す。
光りを受け入れられず、私はゴロンと寝返りを打ち、枕に顔を埋めた。
「んんっ……」
優……優はどうして……。
そう思ったところで、勢いよく上体を起こした。
光り射すカーテンの隙間を覗き込み、目を細める。
どうして……?
今更何を考えてるのか。
もう何年も前の話だ。
“シャッ……!”
勢いよく開け放たれたカーテンの外は、憎いくらいに雲ひとつ無い快晴で。
私の心の中とはまるで真逆だった。