金魚すくい
「俺がこっちに戻ってきてから、ずっと違和感があったんだ。昔の俺みたいに、どっか影を感じるというか……上手くは言えないけど」
うん、それは私も感じてたよ。
大人っぽさを感じる優。
私にその雰囲気があるとは思えないけど、でも私も早く大人になりたいと思ってたから。
そしてそれを、私は今もまだ思ってる。
まだ大人じゃない。
早く1人で生きられるようにならないと……早くお義父さんの元から離れないと……って、そう思ってたから。
「優は考え過ぎなんだよ。この手だって本当に料理中失敗して」
「こんな真ん中に? ありえないよ」
「あるよ。……ほら、私そそっかしいところあるでしょ?」
「柚子!」
優が一喝した。
私が優にそんなふうに言われるのは、これが初めてだった。