金魚すくい


「そんな事ない!」



そうじゃないよ!


そうじゃ……。



私は顔を上げた。


勢いよく振り上げた。


すると、すぐそばには優の整った顔があった。



その整った顔は、痛みを堪えるような表情をつくっていて、私の心をくしゃりと握りつぶす。



「……ごめん。やっぱり病院行ってから学校行く事にするね。優まで遅刻しちゃうといけないから、先に行ってて」



優は再び口を開いた。


……が、言葉はそこから出てこなかった。


ただ眉間にシワを寄せ、憂いだ瞳で……握り締めていた私の手を離した。


どこか名残惜しそうに。


いいや……もしかしたら、そう思っているのは私の方かもしれない。



……何故だかそう、思えたんだ。




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