金魚すくい
昼休み。
教室内外で生徒がガヤつく中、私は教室に足を踏み入れた。
学食でお昼を取る者、教室でクラスメイトと、はたまた他クラスの生徒と食事する者、食事を終えて廊下でたむろする者、外へ出て食事する者。
一番生徒がバラつく時間。
そのお陰でさっきの授業までいなかった私が教室に現れても、特に気にする人はいない。
目立つより有り難い。
そう思ったが。
「柚子」
向かいの席に座る優は、いち早く私の存在を見つけて声をかけてきた。
「どうだった? もう大丈夫?」
「うん大丈夫、ただの腹痛で大した事もないって……」
ごめんね、優。
本当は病院なんて行ってない。
だって私は、この痛みの原因は知ってるから。
それより、無数にある痣を他の人にも見られる訳にはいかないから。
「そっか。それならよかった」
心から安堵で胸を撫で下ろす優。
その姿に私の心にピリリッと刺激が走ったが、その痛みも他の痛みと共に抑えつけた。
優、ごめん……。