金魚すくい
「あら、どこかに出かけるの?」
靴ひもを結ぶ私の背中に、ママは声をかける。
「うん、バイトに行ってくる」
「そう。夜は家でご飯食べるでしょ?」
「ううん、いらない。夜は友達とご飯食べる約束してるから」
「またなの? たまには家でご飯食べなさい。
春休みだからってバイトばかりして、最近家族団らんの時間もないじゃないの」
……でた、ママのお説教タイム。
ここのとこ家には寝に帰るだけになってるから、仕方ないと言えば仕方ないか。
「なんだ、こんな早くから出かけるのか?」
突然ママの後ろから現れた男性。
私はその声に、背筋が凍った。
だって、一番顔を合わせたくない人物がすぐそばにいるのだから。