金魚すくい
「パパも何か言ってやって。柚子ったら春休みに入ってから毎日バイトばかりして、夜は家でご飯食べないし」
「そうだな。柚子、たまには早く帰ってきてご飯一緒に食べなさい」
私はただ振り向きもせず、
「……はい、お義父さん」
玄関の扉を開けて出て行ったーー。
……あの人は本当の父親ではない。
本当の父親は私が幼い時に離婚して、もう顔も覚えていない。
ママはずっと私を、女手ひとつで育ててくれた。
だからママが再婚したいって言った時、反対なんてしなかった。
ずっと苦労してきてるのを近くで見てたから……。
ママがそれで幸せになれるのなら……って、そう思って。
だけど私は、あの人がどうしても怖くてたまらないんだ……。