金魚すくい





・・ーーチャポンーー・・





すくいあげられた私の体は、再び水の中へと落とされる。



ここは、どこーー?



ーーお前は悪い子だからお仕置きが必要なんだ。



お義父さんの声がしたと思ったら、



ーー息が……できない!



金魚から私は、“私”になった。



手足が伸び、呼吸はエラ呼吸から皮膚呼吸へと変わる……。


空気がっ……呼吸、が……。



ーーお前がそんなんだから、罰を与えなければならないんだ。



これは体罰などではない。


誰にも言ってはいけない。


なのにお前は約束を破った。


だからもっと罰が必要だーー。



嫌だ。


誰か……。


息が……くる、しい……。





ーーああ、なんだ。


あの時お祭りで貰った金魚は、私だったのかーー。



お祭りの後、すぐに死んでしまった金魚。


いとも簡単に。


たやすく。


儚く。



だけど……それでも……。


私は天を目指して手を伸ばす。


水面に映る空は遠い、けどーー。





ーー誰か、すくって。





私をここから、


救ってーーーー。





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