金魚すくい


少し離れたところで仰向けに横たわる人物。


なんで……?


お義父さんは横たわって顔から血を流していた。


その衝撃に私の目は引き裂けんばかりに見開き、さらに受け入れ難い事実を突きつけた。



顔を腫らし、微かに声を漏らすあの人の体に馬乗りになって、何度も何度も拳を叩きつけるーー優の姿。



ーーどうして……。



黒い髪を揺らしながら、優はお義父さんの顔を殴り続ける。


とても綺麗で澄んだ黒い瞳を血走らせてーー。



「ーーめて……」



自然と涙が溢れ出す。



「もう、やめて……」



声は優の元へと届かない。


喉はカラカラだ。


そんな私の声は、優が拳を振るう音に飲み込まれる。



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