金魚すくい


「ーー柚子」



その声は震えていた。


向けられた瞳も震えていた。



「優……」



伸ばした手が震えながら、へたりと落ちて。


すぐさまお義父さんの体から飛び退き、私の腕を、体を、掴んでくれた。



「柚子っ!」



ああ。


陽だまりだ。


あったかくて、お日様のような安心する香りが私を覆う。


優。


優。



「ありがとう」



助けに来てくれて。



私をーー


すくってくれて……。




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