金魚すくい
「……叶さん?」
整った顔立ちが不思議そうに私の顔を覗き込んだ。
どうやら私はボーっと見入ってしまっていたようだ。
「あっ、すみません。つい見入ってしまって」
そんな風に、慌てて思った事を口に出してしまった。
すると、勉さんは声を上げて笑った。
「あははっ、何それ。俺の顔にでも見入ってくれたの?」
「あっ、えっと、それもありますが……」
私は困った様子で首にかかった髪をクルクルと指先で遊ぶ。
「叶さんって、素直だね」
「えっ……?」
何て言ったのか聞き取れずもう一度聞き返そうとした時、突然店内へと続く扉が開いた。
「叶さんちょっと早いけどもう入ってくれる? 今レジが混んでるんだ」
「あっ、はい!」
返事を聞くか聞かないかのタイミングで扉は再び締められた。