金魚すくい
「ううっ……うぇっ……」
ずっと堪えていたものが弾け飛んだ。
人前では泣かないと決めていた。
人前に出る時は顔で笑って、心で泣くんだと決めていた。
だからいつもひとりで泣いていた。
……なのに。
もう、涙は止まらない。
溢れ出す声を抑えることができない。
「柚子……ごめん。ひとりにして、ごめん……ひとりで抱えさせて、ごめん……」
違う。
ひとりじゃなかった。
私には雄馬がいた。
ひとりだったのは優の方じゃない。
そのセリフは私が優に言った言葉じゃない。
ーーだけど。
雄馬にも言えなかったんだ。
言いたくなかったんだ。
なのに、優。
優がこっちに戻ってきてから……私は何度か泣き言を言いそうになった。
優の優しさに甘えて、つい口を滑らしそうになった。
必死で堪えていたのに……。
私のほんの少しの表情や、ほんの少しの空気でーー優は異変に気づいてくれたんだね。