金魚すくい


優。


優。



抱き締め返したいのに、体に力が入らない……。


それが悔しい。


悔しいと同時に、悲しくて。



優。


優。


もう、どこにも行かないで……。




すると、突然私の体に巻き付いている優の腕が強くなる。


体が痛くて悲鳴をあげているが、それ以上に甘く幸福感で心を満たしてゆく。



「……ほんとは、髪だって伸ばしたいぃ……」



長い髪が好きだった。


けれど無惨に切られた髪。


長い髪だとお義父さんに引っ張られやすいから短くてもいいや……なんて、自分に言い聞かせて感情を抑え付けていた。



ーーそんな抑え付けていた感情が、全て溢れ出してしまった。



「誰にも知られたくないのに……こんな事、誰にも気づかれたくないのに……でも……本当はっ……本当は…………誰かに助けてほしかったーー」



この日常から。


恐怖に支配された世界から。



ーー本当は、すくいだして欲しかった。




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