金魚すくい


ふと私に顔を埋めて抱き締める優から、少し離れたところで仰向けに倒れたままのお義父さんへ視線を移す。


優に殴られたせいで顔は腫れ、動かない。


胸が大きく揺れているから、多分意識を失っているだけなのだろう。



「優……」


「ん……?」



ゆっくりと顔を上げ、私を見つめる。


私を抱きしめた手は離さない。


吐息のかかる距離で、優は私を見つめている。



「どうしてここに……バイトだったんでしょ……?」



それにどうやって助けに来てくれたのか。


優の黒い瞳はまだ少し充血しているが、いつもの優しい色を携えて見つめ続ける。


目尻の角を少しだけ落として。


薄い唇は歌でも歌うかのように、開かれた。



「言ったでしょ? 何かあったら連絡してって」



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