金魚すくい
再び優は私の体に顔を埋めた。
「柚子から電話もらって出たけど、何の応答もないし……代わりにあの人の豹変したような声が聞こえて、そしたら柚子の声がしたんだ」
私はまた、泣いていたようだ。
顔を上げた優が笑って、私の瞳からこぼれ落ちる涙を優しく拭ってくれた。
「その声は、柚子が俺に助けを求めてるみたいに聞こえて」
男の子の骨張った長い指。
その指が何度も何度も、私の頬をなぞる。
「この家に着いたら、中から何かが割れる音がして思わず玄関開けたんだ。そしたらーー心臓が止まるかと思った……」
語尾が震えた。
眉尻を下げて優は痛みを堪えるような顔で私の涙を拭っている。
その後は想像がついた。
私の上に乗っていたお義父さんをなぎ払い、逆に優があの人の上に馬乗りになって殴り続けていたのだろう。
ごめんね。
手、真っ赤だね。
たくさん代わりに殴ってくれたんだね。
痛かったでしょ。
ごめんね。
ありがとう。
助けてくれてありがとうーー。