金魚すくい


私は再び視線を戻すが、勉さんはフーっと細く長い煙を吐き出し、そばにあった灰皿に灰を落として言った。



「俺、今日はもう上がりなんだけどさ、叶さんがバイト終わったらご飯行こうよ」


「……えっ」



勉さんは基本深夜から朝にかけて出勤する事が多い。


だから私とはいつも入れ替わりなのだが……。



「俺とご飯食べに行くの、嫌?」


「いえ、そんなことはないですけど……」



ただ、驚いただけというか。


今まであまり話したことも無かっただけに、突然だったから……。



「まっ、考えといて」



そう言って端正な顔が優しく微笑んだ。


ちょうど勉さんの後ろにある防犯カメラを見て店内の混み具合を知った私は、ただ小さくお辞儀をしてその場を去っていった。



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