金魚すくい
「ところでーー」
私が記憶に思いを馳せている時、目の前に座る勉さんが私の顔を覗き込んだ。
「今日バイト終わりは予定ある? 久しぶりだしご飯でもどうかな」
「あー……」
視界は天井へと移行する。
もう家は怖い場所では無くなった。
以前のようにひとりで外へご飯を食べに行く必要もない。
最近はちゃんと家に帰ってごはんを食べている。
けど、たまには外で食事するのも悪くはない。
……だけど。
「ごめんなさい」
「何か用事あった? それなら……」
勉さんは一度煙草を吸い、灰皿に灰を落とす。
「いえ、そうじゃなくって……」
何となく言いにくくって、顔を伏せてしまった。
すると視界の端に映る、勉さんが持つ煙草の手がピタリと止まる。