金魚すくい
♦
「お先に失礼します」
中にいるスタッフに挨拶をし、スタッフルームの扉を閉めた。
そこから店の駐車場を通り、道路へ出る。
「柚子」
すると駐車場のフェンスにもたれ掛かり、待っていたのは、
「優」
夕日をバックに黒い瞳が笑顔を作る。
「お疲れさま。忙しかった?」
優と私は共に並んで歩き出す。
背の低い私に対し、ぐんと伸びた優。
長い足は私の歩調に合わせてゆっくりと歩んでくれる。
「ううん、今日はそんなに。優は?」
「まぁ、普通かな」
優はレストラン以外にも、土日の休みに別のバイトを掛け持ちしている。
だからあまり休みが会う事はないけど、シフトの時間を合わせてこうやって一緒に帰ったりしているんだ。
そんな少しの時間が、この上なく幸せだ。