金魚すくい
私は優と付き合い始めた。
毎日幸せで、同時に不安になる。
自分はこんなに幸せでいいのか……って。
毎日のように自問自答している。
「柚子」
夕日に照らされた優の横顔を見上げる。
「お母さん、元気?」
どこか言いにくそうに言ったその言葉は、私の耳の中で何度も何度も反芻されて、ずっしりとした重いものが胃の上にのしかかった。
「うん、元気だよ。……元気すぎるくらい」
ママ達は正式に離婚し、私はママと共にあの家を出た。
小さなアパートを探して、私達の新しい生活はスタートし、もうすぐ1ヶ月が経とうとしていた。
ママは仕事を探して、昔みたいに毎日働いている。
あの人がいた時は、恐怖と殴られた痛みで夜眠れない事が多かった。
だけど今は、不安で眠れなくなるときがある。
ママの幸せを壊した。
私のせいでママの幸せが壊れた。
それなのに、私はこんなに幸せを感じてもいいのかーー。