金魚すくい
話も出来ないまま、店内は忙しそうに満席になっていた。
私は勉さんの話に相づちをうちながら、目の端で優の姿を追った。
他の席の注文を取りにいったり、料理や飲み物を運んだり、時にはお客さんと楽しそうな会話を繰り広げたり……。
「ねぇ、あの店員かっこ良くない? ほら、黒髪の背の高い……」
トイレに立った私のそばで、そんな囁き声が聞こえたのを聞き逃しはしなかった。
その女性の方を見なくても誰を見て、誰を指した言葉なのかはすぐに分かった。
私の幼なじみで、大人になった優だ。
私と同じくらいの身長で、いつも私の隣に立っていた彼。
今はとても遠いーー。
そう、あの時とは違う。
変わってしまったのだ。
彼も、そして私もーー。