金魚すくい
「柚子」
声のする方へ顔を向ける。
「いつまでそうしてる気だよ」
ぶっきらぼうな物言いで、雄馬は教室の奥へと向かって歩き出す。
ーー柚子。
雄馬からそう呼ばれるのは、なんだか久しぶりだ。
私達は成長した。
見た目も、中身も、時間の経過と共に。
優が私達の前から突然居なくなったあの日から、私と雄馬の関係もどこか崩れだしたんだ。
積み木の様に3人でバランスを保っていたものが1つ欠けたことでバラバラと崩れてしまった。
それは雪崩のようなものではなく、ゆっくりと時間をかけて崩れた……。