金魚すくい
ーーあっ。
やってしまった……。
「わかったらほら、後ろにズレる」
そう言って先生は手を振り、席を移るように指示を出す。
なんだか犬を小屋にでも追い返すような仕草だ……。
私は鞄を持って席を立った。
振り返ると確かに不自然にも席がひとつだけ空いている。
何で気づかなかったんだろう……。
そう思いながらのそりと席を移動し座ろうとした時、ちょうど視界に雄馬の姿が映った。
その表情はとても険しくて、思わず立ち止まってしまうほどに。
「叶、早く席に座れ。じゃないといつまでたっても柏木が座れないだろう」
「あっ、すみません……」
私は新しい席に座り、その前の席に優が座った。
すると先生はかったるそうにHRを始めた。
再び先生の話は私の耳に届かず、頭の中をぐるぐる廻っているのはさっきの雄馬の顔。
ーー雄馬、怒ってるの……?