キミ想い


「それじゃ、またね」


学校に到着すると、私とかりんはそれぞれの教室に向かう為に途中で別れる。

かりんは2-Dで私は2-C。

隣りのクラスなのだけど、D組からは渡り廊下を渡った先の校舎になってしまうのだ。

手を振って、また帰りにねと約束してから、私は自分の教室に足を踏み入れた。

友達と挨拶を交わし、自分の席に座る。

カバンを広げ中のものを出していると、隣りの席の椅子が音をたてて引かれた。

ふわりと石鹸のようないい香りがして。


「おはよーさん」


クールだけど、落ち着いた温かみのある声。

二学期に入って聞きなれてきた隣人の挨拶に私は応える。


「おはよ、佐伯(サエキ)。ね、香水変えた?」


問いかけると、佐伯は、ワックスを使って遊ばせている毛先をフワッと揺らして頷いた。


「おー、変えた」

「だよね。その香り好きかも」


どこのブランドのなんてヤツなのか気になって、私は尋ねようと続けて唇を動かそうとした。

けれど、それよりも早く佐伯の声が私に届く。


< 10 / 404 >

この作品をシェア

pagetop