キミ想い
「それじゃ、またね」
学校に到着すると、私とかりんはそれぞれの教室に向かう為に途中で別れる。
かりんは2-Dで私は2-C。
隣りのクラスなのだけど、D組からは渡り廊下を渡った先の校舎になってしまうのだ。
手を振って、また帰りにねと約束してから、私は自分の教室に足を踏み入れた。
友達と挨拶を交わし、自分の席に座る。
カバンを広げ中のものを出していると、隣りの席の椅子が音をたてて引かれた。
ふわりと石鹸のようないい香りがして。
「おはよーさん」
クールだけど、落ち着いた温かみのある声。
二学期に入って聞きなれてきた隣人の挨拶に私は応える。
「おはよ、佐伯(サエキ)。ね、香水変えた?」
問いかけると、佐伯は、ワックスを使って遊ばせている毛先をフワッと揺らして頷いた。
「おー、変えた」
「だよね。その香り好きかも」
どこのブランドのなんてヤツなのか気になって、私は尋ねようと続けて唇を動かそうとした。
けれど、それよりも早く佐伯の声が私に届く。