キミ想い
「何ってチョコだよ。今日はバレンタインでしょ」
まさか蓮から聞き返されると思ってなかった私は、バレンタインと口にして恥ずかしくなった。
思わずうつむいた私の耳に、蓮の声が届く。
「学校で渡せばいいだろ」
「や、チョコたくさん貰ってたでしょ? 荷物増やすのもどうかと思って」
「……届けに来たのか」
「うん」
頷くと、少しの間の後……
「ぷっ……クックッ……ハッハッハッ!」
蓮が笑った。
「お前っ…やっぱ最高…クックックッ」
「え……ちょっと、笑い過ぎだって」
「ああ、悪い」
「……いいけど」
「なずな」
「ん?」
蓮が私の名前を呼んで、私が答える。
そのトーンとやり取りは、一緒にいた頃とまったく同じ空気で。