キミ想い


冷たい風に乗って、雪が舞い落ちてきた。

蓮も気づいて、夜空を仰ぎ見る。


「……そりゃ寒いはずだ」


愚痴るように零す彼を小さく笑って、私もジャングルジムに登ると隣に腰を下ろした。


「もう三月なのにね」

「雪の果て、だな」

「雪の果て?」

「なごり雪とか忘れ雪と同じ意味で、降りじまいの雪のことをそう言うんだ」

「へぇ~……」


雪の果て、か。

ちょっと素敵だけどどこか切ない響きだなと思いながら、空から落ちてくる雪を眺める。

公園のライトに照らされて時折光る雪。


「そういえば、雪の結晶って見たことある?」


蓮に尋ねると、彼は首を横にふってないと答えられた。


「なずなは?」

「ないよ。でも、見てみたい。きっと綺麗だろうなぁ」


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